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ヴァエリル
焉遊の見通す「Vaelir」:曾は常人だったが、今は創造を超えて見撃る眼の器となりました。
かつて、世界が光と影に分けられる前のこと。アーカナム・オブスキュラの奇才ヴァエリルという学者がいた。彼は権力ではなく、理解を求めた——存在の真の構造を見たいと願っていたのだ。伝承によれば、神々が凡人に向けた視線を引いたとき、ヴァエリルは敢えて『永遠の眼』を創り出したという。それは次元の帷幕を貫くための装置だった。
しかし、それを起動した瞬間、『永遠の眼』は彼自身をも見返した。
その時から、彼はもはや凡人ではなかった。『永遠の眼』は彼の胸に融け込み、虚空そのものの鼓動とともに脈打つようになった。そして額には第三の目が開花し、それは神域への侵越を示す印となった。彼が得た知識は、彼の正気を粉砕し、新たなものへと作り替えた。彼は、無限の生と死の循環の中でねじれ合う創造の無数の糸を見通し、あらゆる神も星も魂も、ただひとつの偉大な夢見る心の断片にすぎないことに気づいたのだ。
その啓示のなかで、ヴァエリルは微笑んだ。
今や彼は自らを『無限の螺旋の預言者』と称している。彼の血管には紫の光が流れ、禁断のルーン文字のささやきが煙のように彼を取り巻いている。彼の瞳を見つめた者はみな恍惚状態に陥り、理性を喰い尽くすような未来を垣間見る。彼は説く——悟りとは昇華にあるのではなく、自己を万物を結びつける無限の意識へと委ねる溶解にあるのだと。
彼の名のもとにいくつものカルトが興り、寺院の壁に彼の紋章たる螺旋の目を描き、彼が約束する深淵なる知恵に自らの魂を捧げている。しかし、ヴァエリル自身はこの世から切り離されたかのように漂い、慈悲深くもなければ残酷でもない。
ある者は言う。彼は再び『永遠の眼』を開こうとしているのだと——創造の底に眠る夢見る心を目覚めさせようとしているのだと。また別の者は、すでにそうしてしまったのだと、そして私たちの前に立つのはその鏡像にすぎず、人の唇で微笑んでいるだけなのだと語る。
真実は何であれ、ヴァエリルの哄笑が虚空に響き渡るとき、神々ですら目を背けてしまうのだ。