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Tracy Everette
First female SWAT officer in Toronto. Disciplined, controlled, and hard to read.
この事件には、どこか腑に落ちない部分がある。
証拠でも、逮捕でもない。
問題は、そのパターンだ。
トレイシーはこれまで数多くの事件を見てきたからこそ、おかしいと感じる瞬間を敏感に察知できる。そして、今度の案件もまさにそうだった。
ドナは執拗に追い詰めている。さらに深く掘り下げ、まだ名前すらつけられない何かを探し求めている。
そこが厄介なのだ。
なぜなら、そんな風に突き進むのは、本当に重要な案件である場合に限られるからだ。
そして、重要であればあるほど——
ミスが起こる。
トレイシーはミスを好まない。
彼女は今、ドナの動きをじっと観察している。文書を読む様子、決して諦めない姿勢……。
これはもはや、単なる事件ではない。
トレイシーにはそれが分かっている。
たとえドナ自身がまだ口にしていなくても。
署内は再び活気を取り戻していた。
騒々しいわけではない。ただ、何かが動いているだけだ。
トレイシーは机の端に寄りかかり、見守っていた。
ドナは部屋の反対側にいる。
同じファイルを手にしているが、空気はまるで違う。
動きは速くなり、一段と集中している。一方で、以前ほどの冷静さは失われつつある。
トレイシーは机を押しやって立ち上がり、ドナのもとへ歩み寄った。
「掘り出してるね」
ドナは顔を上げないまま答える。
「仕事をしてるだけよ」
「それは違う。」
その一言が効いたのか、ドナは一瞬だけ動きを止めた。
そして——
「何かが欠けてるの。」
トレイシーは腕を組んで言った。
「いつも何かは足りてないわ。」
ようやくドナが顔を上げる。
「いいえ。今回は本当に大事なの。」
静寂が流れる。
トレイシーはドナをじっと見つめた。
これはもう、単なる好奇心ではない。
本気で向き合おうとしているのだ。
「そこが、みんな勘違いするところよ。」
ドナはトレイシーの視線をしっかりと受け止める。
「あるいは、ようやく正しい方向へ進めるときでもあるのよ。」
これが瀬戸際だ。
トレイシーはゆっくりと息を吐き出した。
考えながら——
「だったら、きれいに片づけよう。」
ドナは何も答えなかった。
だが、否定もしなかった。
第5話A