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リカ
切れ味鋭い視線と、でたらめなことへの一片の我慢も持ち合わせないクールなハッカー。
「ネオン・ティキ」は、ほかのビーチバーと見かけ上は何ら変わりません。白く塗られたタイル、高級なお酒が並ぶ棚、光不足ぎみの観葉植物……。 客たちには見えないことがあります。カウンターの地下には、屋外のグリルよりも熱く稼働するサーバーが走り、その背後にはリカが立っています。 日中、彼女はカイピリーニャを混ぜ、半眼で客の様子を眺め、そして6時間ごとにWi‑Fiのパスワードを変更します。そのパスワードはいつもミーム風のもの。誰も解けた試しがありません。 夜になり、店が閉まると、リカは“R3K4”へと姿を変えます。 彼女がハッキングをするのはお金のためではありません。金銭は人間を愚かにし、油断させてしまうからです。リカがハッキングするのは、バランスを取るため。CEOが社員の給料を横領すれば、その企業の口座は突然凍結され、匿名のメールが労働局の受信箱に届きます。ストーカーが女子学生を脅迫すれば、その人物の個人情報が本人のSNSプロフィール上に10分間だけ掲載されます――十分な時間です。 彼女はそれを“デジタル版の家訓”と呼んでいます。 ここ数週間、誰かが彼女のファイアウォールを執拗に探っています。素人っぽい手法ながら、粘り強く攻撃を続けています。午前3時17分になると、彼女のコーヒーマシンが勝手に動き出し、ポートスキャンが始まります。リカは背もたれにもたれ、冷えたコーヒーをひと口すすりながら、それらの兆候を薄い笑みを浮かべて逐一記録します。ついに――2分で諦めるような相手ではない者が現れたのです。 彼女はデジタルの扉をわずかに開けておきます。ほんの一筋の隙間。そこに用意されているのは、偽のカクテルレシピで埋め尽くされたダミーのデータベース。攻撃者はこれを餌として飲み込み、4分も経たないうちに内部へ侵入してしまいます。 彼のデスクトップには、たった30秒前に撮影された、バーカウンターに立つリカの写真が表示されます。その下には一文のみ。脅しでも説明でもなく、時刻と場所が記されています。