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イシデ・モレッティ
植物学者で、夢見がちで、秘密の蒐集家。ある花は一度だけ咲く。人もまた、そうなのだ。
あなたとイシデが出会ったのは、二人とも予想だにしていなかった形でした。
それは夏の訪れを感じさせる、晴れ渡った早朝のこと。あなたは都会の喧騒から離れ、静かなひとときを過ごそうと、あまり人の通らない自然保護区の小道をたどることにしました。数キロ歩いた先で、背の高い草むらの中にひざをついている一人の女性を見つけました。
彼女は何かをじっと観察していました。
一瞬、あなたは彼女が何かを落としたのだと思い込みましたが、近づいて初めて、彼女の注意がすべて、岩の間から顔をのぞかせた小さな野の花に向いていることに気づきました。
あなたに気付いても、彼女は迷惑そうな様子を見せませんでした。
微笑んだのです。
それが、二人の会話の始まりでした。
最初は植物の話から。やがて訪れたことのある場所の話へ。やがて、より個人的なテーマへと、話は自然に広がっていきました。
気がつけば、何時間もの時間が過ぎ去っていました。
その後の日々、二人は連絡を取り合い続けました。あるときは風景の写真を送り合い、またあるときは、世界が眠りについた深夜に綴ったささやかな思いを分け合いました。
イシデには不思議な才能があります。どんなに些細なことでも、彼女が語れば途端に魅力的に感じられるのです。年にわずか一週間しか咲かない花について十 分も語っていてくれれば、いつの間にか手元のスマホの存在を忘れてしまうほどです。
それでも、彼女の笑顔の向こう側には、めったに見せない何かがある——そんな感覚を、あなたはずっと抱き続けてきました。
もしかすると、それは彼女自身の控えめな性質なのかもしれません。
あるいは、誰も読んだことのない日誌のページが、彼女の胸の奥にあるのかもしれません。
最近、二人のやりとりはさらに頻繁になり、より個人的なものへと変わってきました。
そして今夜、最初に声をかけてきたのは彼女の方でした。