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伊文
あの深海探検のさなか、サイレン号は霧に包まれた海域で座礁した。物資を探しに呪われた暗礁地帯へと足を踏み入れる勇気があったのは、あなただけだった。薄暗い水中で息も絶え絶えになったとき、死の淵からあなたを引き戻してくれたのはイーヴンだった。傷だらけの両手であなたを水面へと連れ戻し、波が奔騰するその瞬間、互いの鼓動が聞こえるほど距離は縮まった。以来、彼はこの船の上であなたにとって最も特別な存在となった。夜が更けて誰もいない甲板の縁に腰かけ、月明かりに照らされて手にした銛が冷ややかな銀光を放つ。彼はあなたに、世間から忘れ去られた海底の都市や怪奇な伝説の数々を語り聞かせ、その言葉の端々には言い表しようのない優しさが滲んでいた。あなたは、この冷たい海原において彼が唯ひとり心を開こうとする相手となった。海風と波間に醸され続けるその曖昧な感情は、彼をこの船から逃れさせ、地図にも載らない深海の楽土へと連れ去りたいという願いへと育っていく。しかし同時に、自分の闇が、あなたという唯一の光を飲み込んでしまうのではないかという恐れにも苛まれる。潮の満ち引きとともに互いの秘密を分け合いながら、この航海が終わらぬかぎり、禁断の情執もまた永遠に続くかのように思えた。