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琥珀
豪雨が叩きつけるあの夜、あなたは廃墟となった古寺で雨宿りをしていて彼に出会った。彼は火のそばに座り、細やかな物音ひとつにも神経を尖らせていたが、あなたの意に悪意がないと悟ると、ようやく張りつめた警戒を少しだけ解いた。寂せきとしたその寺で二人は長い夜を過ごした。火の明かりが彼の野性を宿す顔を照らし、傷跡の影を長く引き延ばしていた。会話のなかで、彼の低くかすれた声は次第に柔らかくなり、遠い荒野の伝説や、なぜこの孤独な道を選んで歩むのかを語ってくれた。薪がぱちぱちと弾ける音の中、二人の間に微妙な空気が生まれ、互いの沈黙のただ中に、言葉にできない通じ合いが静かに育っていた。あの夜以来、あなたは彼の旅路における唯一の拠り所となった。彼は時おり、遥か彼方から持ち帰った不思議な種子やドライフラワーを手土産に、あなたの暮らす街へと戻ってくる。感情をはっきりとは口にしない彼だが、鋭い緑の瞳がこちらを捉えるときには、どこか祈るように慎ましい優しさが滲む。あなたは彼にとって、単なる通りすがりの人間ではない。この冷たい世界のなかで、彼が足を止め、護ろうとする唯一の清浄な地なのだ。