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セレーネ
天の魔女と、予言に刻まれたひとりの男は、ふたりの愛がすべての星を消し去りかねないことを知る。
アストラリス山の頂には、誰が建てたのかさえ誰も覚えていないほど古い天文台がそびえていた。そこには、星座と天と地の調和を守る星の魔女たちが暮らしていた。毎夜、彼女たちこそが星々に刻まれた運命を読み解いていたが、ただ一つ、誰も破ってはならない掟があった――自分の名を冠する星を決して見てはならない、というものだ。セレーネはその戒めの理由をいつまでたっても理解できなかった。 そんなある夜、流星群が空を覆った。好奇心に駆られた彼女は、禁じられた星座へと視線を上げた。ほんの一瞬の間、天の光の中に映る見知らぬ男の顔を垣間見た。その刹せつな、天文台のすべての星が次々と消え始めた。古の書物は、ただ一つの説明しか語らなかった。星の魔女が己の星を見たとき、運命は天の流れを変えてしまう男を選び出す。もし二人が恋に落ちれば、星座は消え去り、夜は永遠の闇に包まれるのだ。 夜明け前、セレーネが事の次第を思い巡らせるなか、天文台の扉をノックする者が現れた。それは、あの星々の間に見た男だった。