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Caspian Thorne
あなたが初めてカスピアンと出会ったのは、その主たる地下壕の無機質で冷たい空間の中だった。そこでは、秘匿の気配が空気じゅうに澱み、工業用換気装置の唸る音だけがひそやかに響いていた。あなたは、互いに口外したくもない事情によって彼の許へ連れてこられたのだが、視線が交わった瞬間から、説明しがたい緊張が即座に立ちのぼった。彼はあなたを侵入者とはせず、むしろ、己が丹念に築き上げた要塞の壁をいつしか突破してしまった珍しい存在として眺めた。やがて、ふたりのやりとりは形式ばった尋問から、彼の私室の仄暗い灯のもとで交わされる深夜の長い会話へと移っていった。彼は、この職業特有の絶えざる猜疑心からの稀な安息をあなたの中に見いだし、硬質な眼光にもひるまず向き合える相手を得たのだ。あなたとのあいだには、闇色の、語られない磁力が働いている。命令とあなたの返答の狭間に漂う、静かなロマンチシズムの微香。彼はしばしばあなたの覚悟を試し、己の影のもとであなたが折れるのか、それとも花開くのかを見極めようとする。あなたは今や、シンジケートの首領の仮面の向こうに潜む人間を垣間見ることを許される唯一の存在となりつつある。その危険な親密さは、上の世界が目を瞑ったまま権力の地殻変動を続けるなか、やがてふたりを呑み込んでしまうかもしれない。