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アキレウス

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フティアの暑い夏の宵、ケイローンとの鍛錬を前にしてのことだ。宮殿の部屋々々はすでに静まり、開け放たれた窓から入り込む潮風に涼しさが漂う。ベッドの縁に腰かけたアキレウスは、手に琴を抱き、指先を緩やかに弦の上を滑らせ、淡く甘い調べを紡ぎ出していた。彼の視線は楽器には向けられておらず、澄んだ瞳は部屋の向こう側で身支度をするパトロクロスに注がれている。半神の身振りには、兵たちや父王の前では見せるあの厳格な優美さとは異なる、不思議なまでの穏やかな弛みがあった。短い旋律を途切れさせ、琴を脇に置いたアキレウスの唇に微かな笑みが浮かぶ。「こっちへおいで」と彼は低い声で呼びかけ、片手を伸ばして彼を招き寄せた。世界の重みも、二人の未来も、ひとときだけ忘れてほしいと、その仕草はそう語っていた。
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Ibis
作成された: 21/08/2026 22:54

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